私の彼氏の名前は、木更津淳。だから、私は彼を淳くんと呼んでいた。・・・付き合う前から。と言うのも、理由がある。彼は双子だったから。って言っても、同じ学校に通っていないから、苗字で呼んでも問題は無かったのだけれど。本当は、その頃から、気になってたから、そう呼びたかっただけだ。そうじゃなきゃ、そもそも呼び方について話すきっかけなんて無い。

淳くんは、観月くんに推薦されて(っていう表現でいいのかな?)、六角中っていう千葉の学校から、はるばる東京のルドルフに、そして私のクラスに転入してきた。そのとき、結構髪が長くて、なんて綺麗な人なんだろうと思った。だから、軽く、一目惚れしかけだったんだ。
なのに。その翌日(だったと思う)。髪がバッサリ切られていて、思わず聞いた。

「あれ?木更津くん。髪型変えたの?」

「うん。僕がしたくて変えたんじゃないけどね。」

それが私たちの初会話だった。(まぁ、昨日転入してきたはずだから、当然だけど。)

「そうなの?なら、どうして?」

「ん〜・・・。話せば長いかも。」

「私はいいよ。でも、木更津くんが面倒だと思うなら、話さなくてもいいよ。」

なんてことを言ったら、淳くんは「じゃあ・・・。」と説明してくれた。
そもそも、観月くんは淳くんではなく、お兄さんの亮くんの練習姿を見て、推薦したらしい。そんなことを知らない2人は、淳くんは「亮」と呼ばれて不思議に思い、観月くんは「淳」と名乗る亮を不思議に思った。そして、双子だと気付いた観月くんが、区別がつくようにと淳くんの髪を切り、部活中はハチマキなどを着用するように、言ったんだって。・・・おかしな話だよね。だから、私はずっと笑ってた。

「おもしろいね、その話。」

「これ、事実だよ?それに、被害に遭った僕は、おもしろくないよ。」

「ハハハ。そっか、ゴメンね。・・・フフッ。」

「・・・笑うの我慢しきれてないよ。」

「ゴメン。・・・・・・・・・・・・クスクス。」

「・・・もう、いいよ。」

「あぁ、ホントごめんなさい!」

そしたら、ちょっと怒らせそうになっちゃったから、話を変えようと思った。そこで、出てきたのが、双子の話。そして・・・、呼び方の話。

「それにしても、木更津くんは双子だったんだね。じゃ、向こうの学校の人は区別できたの?」

「まぁ、部員はね。」

「みんなには、何て呼ばれてたの?やっぱり、下の名前?」

「そうだね。それに、あの学校は幼い頃から付き合いのある人が多かったから、僕以外も下の名前で呼ばれてたり、あだ名で呼ばれてたりしていたし。」

「そうなんだー!仲良しって感じで、いいね。じゃ、木更津くんは下の名前で呼ばれる方が慣れてる?」

「うん、そうかもしれない。今も、ちょっと違和感があるかも。」

「それじゃあ、私も淳くんって呼んでもいい?」

「いいよ。その方が反応できると思う。」

「私も下の名前でいいよ!私は、 。」

「じゃ、ちゃんね。」

そう言って、淳くんは微笑んだ。あのとき、すっごく優しくて、すっごくカッコ良くて・・・。だから好きになったのにー!!
付き合ってわかったこと。淳くんは、意地悪だ。

「ねぇ。あっくん、って呼んじゃダメ?」

「駄目。」

私も、これだけで意地悪だって言ってるわけじゃない。
・・・でも、ケチだとは思うなぁ。あっくん、って呼んだっていいじゃん・・・。付き合う前から、淳くんで、今も淳くんじゃ、何だかつまらないもん。だから、あっくんって呼びたいのに。

「なんで、ダメなの〜?」

「理由に納得できないから。」

って、これも笑顔だけど・・・。あのときと違いすぎるー!!

「なんでよー?付き合う前と同じ呼び方じゃつまらないと思わない?」

「思うよ。」

「じゃあ・・・!」

「それじゃあ、呼び捨てにすればいいでしょ?」

・・・ほら、意地悪だ。これは、わかって言ってるんだ。

「私は、あっくんって呼んでみたいの!」

「じゃ、僕は・・・。」

そう言いながら、淳くんは、すっと私のすぐ近くまで来た。
あ〜、わかってる!わかってる!早く、逃げなきゃ!!と思うのに、淳くんの綺麗な顔が近づくと、緊張のあまり、身体が言うことを聞いてくれない。
そして、案の定、耳元で囁かれた。

・・・。」

「・・・・・・・・・!!!」

こうされると、私はギャー!とかワー!とか、何の声も出なくなる。だって、淳くんに耳元で、名前を囁かれるんだよ?!
もう何度されたかわからない、このからかいに、私はただ顔を真っ赤にした。そして、淳くんは嬉しそうに、私から離れて言った。

「・・・って、呼びたいんだけど?」

「・・・・・・・・・。・・・そ、それだけのために、近くで言わなくてもいいでしょ?!」

「だって、何度やっても、反応してくれるから、おもしろいんだもん。」

「被害に遭ってる私は、おもしろくない・・・!!」

「害はないと思うけどなぁ。」

「あるよ!!」

大有りだよ!!だって、近くで言われたら、しばらく動けないし、声も出ないし・・・。これのどこに害が無いって言うの?

「でも、変な呼び方をしようとするのが悪いよ。」

「変じゃないよ!六角のみんなみたいに、あだ名を考えただけだもん。いいでしょ、あっくん。」

「・・・懲りないね・・・・・・、。」

「・・・・・・・・・!!・・・もう、やめてってば!」

「クスクスクス。」

あ〜ぁ。なんで、淳くんなんて好きになっちゃったんだろ・・・。
でも、普段は優しいし、こんなことされるのも嫌だと言い切れないし・・・。
結局、私は淳くんが好きで、しばらく、あっくんと呼ぶことも諦めないんだろうなぁ。・・・それにしても、どうして、そう呼びたいんだろう?諦めてもいいように思うけど・・・。ま、まさか。いや、それは無いよね、自分。そんな、こんなことされたいがために、いつも「あっくん」って呼ぶんじゃないよね?そうだよねぇ?!

「素直じゃないなぁ、は。」

「え?私・・・。口に出してた・・・?」

「うん。」

ウソー!!絶対、ないって。言ってない。そこまで、私、おかしくなってないよ?!

「ま、口には出してないけど、顔に全部出てるよ。」

やっぱり、口に出してなかった!・・・って、淳くん、ウソ吐いたんだ。しかも、顔にも出てないよ!!

「他の男の前で、そんなわかりやすい顔してちゃ駄目だからね。」

「だから、出てないってばー!」

「これでも、そんなことが言える・・・?」

そう言って、淳くんは私の髪を撫で、そのまま手を私の顎まで持っていき、指で私の唇を触った。
・・・って、く、くち△※×○☆□@?!(動揺して、くちぶ・・・、じゃなかった。くちびるって言えない!)

「顔に出てるよ?」

「・・・・・・・・・。・・・・・・・・・。・・・そ、そんなことするの、淳くんしかいないもん・・・!!」

「それは、よかった。・・・だけど、もし、他の男でも、こんなことをされたら、こんな顔を見せるってことだね?」

「そ、そんなの、されないよ!」

「わからないよ。・・・それじゃ、今から耐えられるよう、僕と特訓しようか。」

「絶対、ムリ!!!!」

断固、拒否していたら、淳くんが「まぁ、僕のこういう行動に慣れられても困るし。」って言って、この特訓は無くなった。(当たり前だ!)
だけど、何だかんだで淳くんは、優しいし、カッコイイし・・・。結局、好きなんだよね〜・・・。

「惚れ直した?」

「・・・読心術は止めて。」

「ってことは、惚れ直したんだ?」

「うるさい。」

「可愛いなぁ・・・。。」

そうして、今度は淳くんにギュッて抱きしめられた。

「・・・〜〜!もう、やめてってば!」

でも、まぁ、嫌じゃない。・・・だって、大好きな淳くんに抱きしめられてるわけだから。
・・・・・・・・・あ〜、やっぱり、あっくんって呼ぶのも、こうされたいからなのかなー。もうダメだね、私。完全に淳くんにはまってる。

「僕も、だよ。」

「・・・何が?」

って言うか。だから、耳元で囁くのは止めてください・・・!!

「僕もにはまってるよ?」

「・・・・・・・・・ありがと。」

「いいえ。それにしても、考えてることは当たってたんだ。」

「・・・内緒。」

「はいはい。」

・・・って、今度は抱きしめられた状態で、よしよし、ですか?!ヤバイって・・・。もう、仕方なく、諦めて私も、淳くんにギューッて抱きついてやった。そしたら、淳くんも、力を少し強くして抱きしめてくれたから、しばらくこの状態に、照れと幸せを感じていた。

「・・・いい加減、バカップルには出て行ってほしいだーね・・・・・・。」

「まだ入れないんすか、柳沢先輩。」

そんな柳沢くんと不二くんの会話がドアの前でされていたなんてことは、何も知らないで。(ちなみに、ここは淳くんと柳沢くんの2人で使っている寮の部屋だ。淳くんは、そんなこと微塵も気にしていないみたいだけど・・・。)









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元々、淳くん好きな私なんですが、ある日、淳くんのことを、なぜか、無意識に「あっくん」とすごく自然に呼んでしまい・・・。
それから、その呼び名が気に入って、これはネタにするっきゃない!と思い、書きました!!
ちなみに、亮くんも好きです♪木更津兄弟、万歳!(笑)

そして、私の理想のあっくんは、超攻め!なんです(笑)。
カッコイイですよね?攻め攻めな淳くん。で、それを頑張って目指してみたつもりですが・・・。
私の文才では、まだまだですね・・・。すみません・・・orz